[ 目録 ]
妊娠とくすり 1

 まず基礎体温をつけましょう。


 女性の基礎体温は、生理の周期とともにあがったりさがったりしています。といっても、その幅は、わずか0.3〜0.5℃程度の微妙なもので、婦人用の精密な体温計で毎日つけてみないとわかりません。一般的な基礎体温の例を右に示しますね。

 もちろん風邪ぎみだったりなど変動があるものですが、月経からしばらくは低温相があり、そのあと高温相の2相性になっています。低温相から高温相に変わるとき、いったん体温が下がる時期があるのですが、そのときが排卵日なることが多いようです。といっても、確実に排卵日となっているわけではなくって、前後2日間の誤差があります。
 何周期かつけてみるとわかると思いますが、低温相は体調によって短かったり長かったりします。でも、高温相はほぼ14日程度と一定です。

 妊娠すると高温相が持続します。この高温相は妊娠維持に必要不可欠で、もし体温がさがるなんてときは妊娠状態を維持できなくて、流産などを起こしてしまう可能性がでてきます。

 排卵日を予測して、受精を試みると妊娠する確率も高くなります。また、妊娠をはやく知ることができます。このため、基礎体温をつけることをぜひお勧めします。

 妊娠するかもしれないとき

 第一に治療を優先することが大切です。妊娠した場合、つかえる薬が限られてくるので、その前に治しておいた方が絶対にいいです。そうしないと長い妊娠期間を乗り切るなんて、できなくなってしまうかもしれません。胎児に影響の少ない薬は、昔からある薬が多いのですが、効きもいまいち・・な場合が多いです。
 その反面、最近の開発された新しい薬は、効果もいいのですが、妊婦さんでのさまざまな影響はわかっていないものがほとんどなのです。

 治療を優先させるとともに、妊娠をできるだけはやく知ることが大切になります。このためにも、ぜひ基礎体温を記録してください。
高温相になってから17日〜20日目までの間は、受精卵が母胎にくっついていないので、薬に対する影響を考える必要はありません。
高温相が17日以上持続する場合に、妊娠成立の可能性を考えて、過敏期を迎えるまでに受診して、治療方針を確認すればいいのです。
 
受精卵が胎盤にくっつくまでに治療を終えてしまう方が、賢い方法なのです。もちろん1週間に1回しか、のまない、注射しないような薬は別ですけど。

 妊娠中にも必要であればつかう薬

(1)総合感冒薬:葛根湯、小青竜湯(鼻水)、麦門冬湯(咳)、PL顆粒

(2)解熱消炎鎮痛薬:アセトアミノフェン(カロナール)、イブプロフェン(ブルフェン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、
 フルルビプロフェン(フロベン)、メフェナム酸(ポンタール) ただし、動脈管閉鎖のため妊娠末期は使用しない。

(3)鎮咳薬:デキストロメトルファン(メジコン)、リン酸ジメモルファン(アストミン)、リン酸ベンプロペリン(フラベリック)
 β2受容体刺激薬:硫酸サルブタモール(ベネトリン)、硫酸テルブタリン(ブリカニール)、塩酸クレンプテロール(スピロペント)、
  塩酸クロルプレナリン(アストーン)、臭化水素酸フェノテロール(ベロテック)
 キサンチン誘導体:テオフィリン

(4)去痰剤:塩酸ブロムヘキシン(ビソルボン)

(5)抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬:マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン)、クレマスチン(タベジール)
 投与が好ましくない抗アレルギー薬も多いので注意が必要である。
 クロモグリク酸 点鼻・点眼・吸入(インタール)、少量のステロイド点鼻・点眼

(6)抗生物質
 セフェム系(第1世代):経口剤 セファレキシン(ケフレックス)、セファトリジン(セプチコール)
      注射:セファロシン(ケフリン)、セファゾリン(セファメジンα) ・新世代のセフェム系はヒトにおける経験が少ないので避けた方が無難である。
 ペニシリン系:アンピシリン(ビクシリン)、アモキシシリン(サワシリン)
 マクロライド系:エリスロマイシン(エリスロシン)、クラリスロマイシン(クラリシッド)

(7)下剤:妊娠中は便秘傾向になるので、繊維質の多い食事と牛乳などの摂取をまずすすめる。
 薬としては、酸化マグネシウムとパントテン酸の併用、センノシド(プルゼニド)、ピコスルファート(ラキソベロン):頑固な便秘
 ビサコジル(テレミンソフト坐薬)
 ・アロエは胎児の腸を刺激して胎糞を出し、大黄は子宮を収縮するので、これを含んだ下剤は使用しない。

(8)制吐薬:メトクロプラミド(プリンペラン)
 ・重症妊娠悪阻のときは補液(ブドウ糖+電解質)にビタミン剤を加えて脱水状態を改善すると、悪心・嘔吐も改善される。
 メトロクロラミドはやむを得ない時にのみ使用する。

(9)胃腸薬:スクラルファート(アルサルミン)、制酸剤(マーロックス)

 妊娠中にのむ薬の原則

 薬は安全だから投与するものではなくって、必要性があって投与するものです。単剤で催奇形性のない薬剤を選択します。全身に移行しにくい外用剤あればそれを選びます。そして、必要な量をなるべく短期間服用するのがポイントです。こわごわ少量を服用するよりも、「治すぞっ」と気合いをいれて、「ばしっ!」とのむ方がいいです。
 お母さんの高熱の血液が胎児にそのまま行くことや菌などにさらされる影響の方が、おなかの中の胎児にとって、たいへんなのです。

2002/4/6