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妊娠とくすり 2

 薬をのんでしまったんだけどだいじょうぶ?

[くすりの質問Box]で一番おおい質問です。

 長い間ずっと「胎児は、子宮という聖域にいるので、外からの影響は受けない」と言われてきました。この神話を打ち砕いたのが1961年のサリドマイド事件です。この衝撃的な事件によって、妊婦が薬をのむことは罪悪のようになってしまったのです。
 このため「妊娠と気づかずに薬を服用してしまったが大丈夫?」という質問があまりにも多いのだと思います。確かに、服用した薬への不安が大きいことはわかるのですが、女性側の認識の甘さには悲しくなります。妊娠する可能性があるのなら、[妊娠とくすり1]で書いたように、基礎体温をつけたり、基礎疾患のコントロールをつけたりと、前もって備えておくべきだと思うのです。でも、それは知識不足のための過剰な反応かもしれませんね。そうすると、私たち医療従事者の力不足が原因ですね。

 万が一、先天的な異常がみつかると、閻魔大王のごとく妊婦を避難する方がいます。このため服用してしまった後悔の念に悩まされて、育児に専念できないお母さんも少なくありません。ところが、生命の誕生自体、かなり奇跡的な出来事なのです。1回に射精される精液のなかに通常精子は約3億個が存在します。その中のたった一つの精子と卵子が出会った受精卵が、30億個の核酸からなるDNAを正確に複製して、細胞分裂を起こし続けるのです。そして人間を形成する何百万もの特殊化された細胞になっていく・・。その複雑さを考えたら、出生時の奇形は、驚くには値しないです。コンピューターでさえ、間違いを起こすのですから、人間なんて間違えだらけと、私は思うのです。

 実際、新生児の約3〜4%に、主要な出生時欠損があると言われています。その中の1%が妊娠初期に薬物や化学物質を使用したことによるといわれています。つまり計算すると0.03〜0.04%程度の影響でしかないのです。

 「だいじょうぶ」の意味

 もし「胎児に影響がないかどうか」確認しようとすると、私たちは人道をはずさねばなりません。人体実験をするわけにはいかないのです。
 その代わりに動物実験の結果から、推測するということをします。しかし、それはあくまで動物実験であり、ヒトでの催奇形性がないことを証明するものではないのです。たとえば、サリドマイドはマウスやラットでは奇形を起こさないのですが、兎・猫・猿・ヒトで奇形を起こすのです。つまり、動物実験で催奇形性が報告されなかったといって、ヒトで起さないとも限らないのです。また、薬による影響を明確にしたいために、実験での動物には、通常つかう量の10倍とか100倍を投与したりします。どんな安全な薬でも、そればっかり食べさせられたら、食事ができなくて、栄養状態が悪くなって、なんらかの異常がでることは、推測できますよね。そんなデータをそのまま鵜のみにしてしまうことのないように、くれぐれもお願いしたいのです。
 だから、だからね、「動物実験で奇形が報告されているから異常がある」とは言えないし、それを根拠に中絶を勧めることは、私は絶対にできないのです。

 私たちが「だいじょうぶですよ」というのは、さきに述べた異常の起きる確率が、その薬をのんだ場合とのまない場合とは変わらないだろうという意味です。胎児に異常がでたかどうかは、検査を行っても確実には言えないのが、現実なのです。無事生まれてくれるまでは、本当のところは、だれにもわからないのです。無事生まれてきてくれても、きちんと成長していくかとか、親にとっては心配がつきないものだと思います。

 出生前診断 

 出生前診断を受けることによって推測できる異常もあります。出生前診断とは、出生前に胎児の異常や状態を診断するのが目的で、その中でも、主に先天異常に関する胎児診断を指します。それぞれ、診断方法により適切な施行時期があります。ここでは簡単に紹介しますね。

◇着床前診断
 体外受精において分割した受精卵の細胞の一部を取り出して染色体異常や遺伝子異常を分析する方法です。欧米ではすでに多くの臨床応用の報告があるそうですが、日本では倫理的な問題などから、実施されていないようです。

◇超音波断層法
 妊娠のどの期間でも施行できて、身体を傷つけなくていい検査なので、何度でも繰り返して検査できます。写真ももらえるしねっ

◇母体血清マーカー試験
 妊娠と母体の血中に、胎児が作るさまざまな物質があらわれてくることを利用して、胎児の状態を推定しようとする検査です。もともとは、無脳症や二分脊椎などで胎児が作るα-フェトプロテインが母体血中で高値となることを利用したものですが、その後、胎児がダウン症侯群の場合、母体血中のα-フェトプロテインが低値をとることが多いことから、胎児がダウン症である確率を推定するのに利用されるようになりました。
 妊娠15〜18週に施行されて、母体の年齢とその値からダウン症である確率が算出されます。しかし、あくまでも「確率」が計算されてくるのであって、本当に胎児がダウン症かどうかは、羊水検査を施行しなければわからないそうです。

◇絨毛検査
 妊娠9〜11週頃に腹壁や頚管を通して、絨毛を採取し、染色体異常やDNA診断を行うものです。検査による流産率は、約2〜5%だそうです。また、妊娠8週以前におこなわれた場合、高度の奇形の危険性もあるそうです。羊水検査よりもはやい週数で異常が発見できるのですが。

◇羊水検査
 羊水検査は、現在広く行われている出生前診断方法の一つです。超音波をあてながら腹部から子宮腔内に穿刺針を刺して、羊水を吸い出し、胎児の浮遊細胞を採取して、染色体解析やDNA分析に利用します。流産率は0.3〜0.5%とのこと。高齢妊娠をはじめとした胎児染色体異常の検査としてコマーシャルベースで複数の検査会社が取り扱っていて、妊娠15〜18週頃に施行されることが多いでし。通常の染色体解析結果であれば2〜3週間で結果が報告されてきます。

◇胎児採血・胎児組織採取
 超音波をあてながら胎児の血や皮膚などを採る方法です。まとまった量の胎児細胞を得ることができるため、特殊な検査も施行できるけども、羊水検査よりも流産をおこす可能性や胎児を傷つけること可能性が高いです。出生前診断を専門とする限られた医療機関でのみ行われているみたい。

◇胎児MRI
 以前は、胎動によって診断には不十分な画像しか得ることができなかったのですが、最近は撮影方法が改良されて十分な画像が得られるようになってきました。主に妊娠後期に行われて、身体を傷つけることないので、胎児水頭症の評価などに利用されることが多いとのことです。
[参考 治療,増84:920-923,2002]
 新しい命を信じてあげて 

 ただ、MediCaが思うことは、お母さんの不安は、胎児も感じると思うんです。それが10ヶ月間も続くと胎児がかわいそうじゃないかな。異常だったらどうしようとか考えてばかりいると、そうなっちゃうかもしれないもん。 それよりも生まれてきたら、こうしてあげよう、あそこにいっしょに行きたいとかを考えてあげた方がいいと思う。 胎児は、一生懸命に生まれてくる準備をしているのです。新しい命の力を信じてあげて欲しいです。

なにかあったら不自由かもしれないけど、それは不幸じゃないって、どこかのだれかさんのセリフですね。



2002/4/11