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緑内障とくすり

緑内障とは?


 緑内障は、眼が耐えうる以上の眼圧によって引き起こされる視神経の病気です。主な緑内障は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、正常(低)眼圧緑内障などがあります。こ中で薬物療法が主に行われるものは、開放隅角緑内障、正常(低)眼圧緑内障、高眼圧症で、眼圧を低下させるだけでなく、視神経(乳頭)の血液循環を改善させる治療(視神経防御)が行われます。
 
◇眼圧の各基準値
・正常眼圧9〜21mmHg、平均眼圧:15mmHg、眼圧境界値:21mmHg(Leydhecker,W.1976)
・日本人の平均眼圧:13.4mmHg(緑内障疫学調査)
 眼圧は正常人でも4〜5mmHg程度の日内変動が存在します。そのパターンは様々で、開放隅角緑内症ではこの変動が大きいことを知られています。季節変動もあり、冬に高い傾向があります。
 
【開放隅角緑内障】
 房水(眼の中の水分)の流出低下が起きて、眼圧が上昇している状態です。隅角(房水の出口)は開いているので、多少縮瞳が生じたくらいでは、致命的に眼圧が上昇することはまずありません。例えると、フィルターが目詰まりを起こした状態で、配水管は開いている状態です。
 眼鏡の矯正で視力は正常を保っていても、眼圧と視野に異常があることがあります。眼圧が正常範囲である21mmHgを超えて、視野に異常がみられる。たとえば、右眼の鼻側に暗点が認められるということは、右眼の鼻側に見えない部分があるということです。このまま放置すると失明の危険があります。
 といっても、著明な症状はありません。自覚できるのは「どうも目が疲れる」とか「何となく頭が重い」などの不定愁訴です。
 
 開放隅角緑内障で、確実に眼圧を上昇させる可能性があるのは、今のところステロイド剤だけで、他の薬では証明されていません。

【閉塞隅角緑内障】

 瞳孔ブロックが起こり、隅角(房水の出口)が閉塞した状態です。たとえると排水管を急にクリップで締めた状態になります。
 眼圧が急にあがるため、水道管なら破裂するところなのですが、眼では神経が圧迫されて、痛みが、眼部、前頭部、耳、副鼻腔、歯などに生じます。角膜が浮腫を生じ、霧のなかにいるように見えて、光源の回りに光の輪が生じたりします。圧で、迷走神経反射が生じ、嘔気、嘔吐、徐脈、発汗などが生じることもあります。脈がみだれるなんてこともあります。 
 急に眼が痛くなって、電球のまわりに虹が見える(虹指)のようになったり、霧のなかにいるようにかすんだりして、頭痛や吐き気を伴う場合を「急性緑内障」といいます。症状が長引くと、視神経が障害されて、視野狭窄となり、元にはもどらなくなってしまいます。
 
【正常(低)眼圧緑内障・高眼圧症】
 正常(低)眼圧緑内障では、Ca拮抗薬の点眼剤が正常(低)眼圧緑内障に有用であることが報告されています。(適用外使用)
 高眼圧症は眼圧が眼圧基準値(21mmHg)より高いものの視神経が障害されず、視野狭窄は認められない疾患で、全緑内障の約1/3だそうです。緑内障(視野狭窄)へと進行させないために、眼圧を降下させる薬物療法が行われます。

くすりの説明書に「緑内障の方は注意してください」とあるのですが?

 かなり広い薬効分野にわたって、多くの薬が添付文書(薬の医療従事者向け説明書)に「緑内障の患者に禁忌」となっています。
その記載も「緑内障」とだけ書かれている薬もあれば、「閉塞隅角緑内障」「急性狭隅角緑内障」と記されているものまでさまざまです。大衆薬に関しても、鼻炎用薬、感冒薬、胃薬などの抗ヒスタミン剤や、抗コリン作用、交感神経刺激剤が配合されている薬の添付文書には「注意が必要」であると記載されています。
 例えば抗コリン作用をもつ薬剤は、副交感神経末梢のムスカリン作用を遮断することで散瞳を引き起こします。散瞳すると、隅角閉塞が引き起こされ、眼房水の排泄がスムーズに行われなくなって眼圧が上昇し、緑内障の発作を起こすと考えられています。

 しかし、現実には、添付文書に禁忌とされている薬剤でも緑内障を気にせずに使用されている薬が多いのです。

 開放隅角緑内障患者では、抗コリン作用または交感神経刺激作用を有する薬物を 連用した際に眼圧が上昇する場合がまれにあるとされていますが、急性緑内障発作のような高度の眼圧上昇を来すことはないようです。
 催眠鎮静剤・抗不安剤のベンゾジアゼピン系薬剤の抗コリン作用については、弱い抗コリン作用を有するという報告がある一方で、作用を有していないとする報告もあり、結論は出ていないようです。緑内障に対して禁忌とする実験的報告も症例もないのが現実です。
 亜硝酸剤やニコランジルなどの血管拡張剤は、脈絡膜の血管を拡張することから、一過性の眼圧上昇を引き起こすという理由で、緑内障に禁忌とされていますが、これもまた緑内障を悪化させるという確証はなく、禁忌とする理由を疑問視する医療関係者が多いようです。

 反面、開放隅角眼での薬物による眼圧上昇は、眼痛、頭痛、悪心・嘔吐などの症状を起こすこともほとんどないので、発見が遅れがちになる可能性があります。なので、これら薬物を連用する際は眼科医と連絡をとって慎重に行うべきということになります。

 ただし、副腎皮質ホルモン薬やカフェインは、隅角の広さとは関係なく眼圧上昇を起こしうることが知られています。
絶対に禁忌と考えられている薬の例を挙げると、
 ○ステロイド点眼剤:リンデロン点眼液を1週間点眼しただけで、高眼圧を生じることがある。
 ○アトロピン点眼剤:持続性で強力な抗コリン作用を有する。
  1%アトロピン点眼剤を点眼した場合、その回復に散瞳は約7〜10日間、毛様体筋麻痺は約6〜12日間持続かかる。
 ○カフェイン類:200〜400mgで眼圧2.9mmHg上昇するかも〜((^^;)  [カフェインの目安としては、コーヒー1杯85mg、紅茶1杯50mg、コーラ360mlに50mg]
などがあります。

 生活面では、大量の水(1Lくらい)を一度に飲んだ場合、喫煙、うつ伏せ体位、長時間の近業、映画などを暗所で長時間みることなども発作の誘発になります。

 閉塞隅角緑内障は、発作が起きる危険のある眼として、診察でわかるらしいので、ほとんどの患者に予防的にレーザー虹彩切開術(または周辺虹彩切除術)を施行するのが普通だそうです。レーザー虹彩切開術は解剖学的に後房と前房のバイパスをつくる術で、閉塞隅角緑内障の発作は起こりにくくなります。このような処置をおこなっていなくても、縮瞳剤は点眼しているはずなので、上記の開放性隅角眼と同じように考えてよいのです。

 もちろん、注意は必要です。緑内障の方には、「この薬を飲んでいることを眼科医に伝えてくださいね。この薬は、眼圧に影響することがまれにあるんですよ。この薬をのんでいる間は、とくに緑内障の治療をきちんと受けるようにして下さいね。」と伝えています。

 治療を"放棄"している緑内障患者さんが、私はいちばん心配なのです。
2001/1/10

日本医事新報,3813:93-94,1997/月刊薬事,37(2):411-423,1995